今年もインフルエンザが徐々に流行し出しています。国立感染症研究所が発表している埼玉県の定点当たり報告数は1.19です(1.00を超えると「流行」)。
インフルエンザ発症時に処方される薬の1つ「タミフル」。
以前は「タミフルを飲むと異常行動を起こす可能性がある」と言われていましたが、最近の報告では「タミフル服用の有無にかかわらずインフルエンザに罹ると異常行動を起こす可能性がある」ということが分かりました。
インフルエンザ罹患者の約10%に異常行動
最新の報告によると「インフルエンザ罹患者の異常行動の原因はタミフル以外にもある」という見識が広がっています(タミフルが原因ではない、とも言えない)。
異常行動はインフルエンザ罹患者の約10%に見られ、中にはタミフル服用前に異常行動が発現したものがいたことからこのような見識になったようです。
異常行動が出るタイミング
異常行動が発現したインフルエンザ罹患者のうち、発熱から2日間以内に発現したケースが最も多いそうです。
また異常行動を起こすのは「小児および未成年の男性に多い」と言われていましたが、最近では「誰でも異常行動が発現する可能性がある」という見識に変わってきているそうです。
報告のあった異常行動(例)
中外製薬の発表によると、異常行動の多くは「幻覚や幻聴による現象(行動)」と似通ったものが多くみられたようです。
- 突然立ち上がって部屋から出ようとした。
- 興奮して窓を開けて飛び降りようとした。
- 人に襲われていると訴え、外に走りだした。
- 突然笑い出し、階段を駆け上がろうとした。
- 無意識で家を出て外を歩いていた(話しかけても反応しない)。
- 変なことを言いだし、泣きながら部屋の中を動き回った。
- 興奮状態になり手を広げて部屋を駆け回り、意味の分からないことを言った。
異常行動の原因(推測)
インフルエンザの罹患者に出る異常行動は、インフルエンザ脳症と同じく「免疫の暴走(過剰な免疫反応)」によるものだと考えられています。
インフルエンザウイルスの毒性はかなり強く、罹ると体内の免疫システムが痛烈なダメージを受けます。特に免疫を調整するサイトカインネットワークが大きなダメージを受けて障害が発生すると免疫が暴走してしまうと考えられています。
免疫が暴走すると脳もその影響を受け、特に感覚や感情をコントロールする機能をもつ側頭葉に障害が発生すると幻覚や幻聴による現象に似た異常行動が発現する可能性があるそうです。
異常行動への対策
インフルエンザに罹ったことによる異常行動の原因が体内の免疫システムでは防ぎようがないので、異常行動によって引き起こされる事故を防ぐことが重要になります。
異常行動(例)からすると恐怖や不安に対する行動、特に逃げるなど
インフルエンザり患時の異常行動の多くが幻覚・幻聴による現象に似通っているならば、不安や恐怖による行動、特に逃走などの逃避行動が多いと予想されます。
そのため、異常行動への対策としては
・り患者を決して一人にしない。
・玄関や窓など「出口」となるものに確実に鍵をかける。←重要
・一階の部屋で休ませる(転落事故を防ぐ)
異常行動による事故に対して最も注意するのは発熱からの2日間です(それ以降に発現しないわけではない)。特に子どもが罹った場合は必ず事故の予防策をするようにしましょう。
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5歳未満の子どもは「インフルエンザ脳症」にも注意
インフルエンザ脳症とはインフルエンザが原因で脳の組織に障害を負う病気で、主に5歳以下に多く発症します(5歳以下はあくまでも傾向であり、2009年のインフルエンザ流行時は5~9歳の発症が多かった)。
参考:インフルエンザ脳症の症状・治療法・予防法…後悔しないよう大人も注意を [インフルエンザ] All About
インフルエンザ脳症とは
「インフルエンザ脳症」とは、インフルエンザウイルスの影響による免疫異常が原因の脳の障害です。
インフルエンザそのものが脳に入り込むわけではなく、ウイルスに対して体内の免疫が過剰に反応したことにより脳の組織が破壊されてしまう病気です。
インフルエンザ脳症を発症した患者の約80%に、発熱してから2日以内にけいれん・意識障害・異常行動などの神経症状が見られたそうです(但し「異常行動=インフルエンザ脳症」とは限らない)。
インフルエンザ脳症を発症すると神経症状がさらに進行し、悪化すると血管が詰まったりして多くの臓器が活動を停止させてしまうこともあります。
その結果、治癒後に後遺症が残ったり、最悪の場合は治癒せずに命を落とす危険性もあります。
インフルエンザ脳症に関する報告
厚生労働省の研究班の研究により、インフルエンザ脳症に関しては次の報告が上がっているそうです。
・脳症の死亡率は約10%(無治療では約30%、初期段階で適切な治療を受けることで10%以下まで下がる)
・後遺症の発生率は約25%
・5歳以下の発症率が高く、男女の差はない
・発熱などのインフルエンザの症状が出て2日以内に発症することが多い
・毎年100~300人の子どもが発症するため珍しい病気ではない(誰でも発症する可能性がある)
・発症後は免疫異常を押さえる治療を行うものの特効薬はない(主な治療は対症療法となる)
・傾向として、インフルエンザA香港型の流行時に多発
インフルエンザ脳症の重篤化を予防する方法
インフルエンザ脳症を防ぐにはインフルエンザの発症を防ぐしかありませんが、インフルエンザ脳症の重篤化を防ぎ後遺症の発生率や死亡率を下げるには早めの対処が重要になります。
まず、インフルエンザの症状が出たら早めに医療機関を受診し、インフルエンザの確定診断を受けます。インフルエンザ脳症を疑って治療を行うには、まずインフルエンザの確定診断が必要だからです。
インフルエンザと確定されたり患者に意識障害や異常行動などの脳症の症状が出た場合、医療機関は脳波検査、頭部CTR検査やMRI検査、血液検査、尿検査を行い脳症の徴候を確認します。
インフルエンザを発症するとタミフルやリレンザなどのインフルエンザ抗生薬が処方されますが、これらの治療薬を服用しても、残念ながらインフルエンザ脳症の発症率は下がらないそうです。
インフルエンザ脳症の発症を防ぐならば、ワクチン接種などでインフルエンザそのものに罹らないことが重要になります。
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