出産、お疲れ様でした。
[/word_balloon]出産は2回目なのでなんとか…それよりも「野良妊婦」が衝撃的でした。
[/word_balloon]「野良妊婦」とは、妊娠しているにもかかわらず産科・助産院への定期受診を行わず、かかりつけ医を持たない妊婦のことを言います(インターネットを中心に使われ、病院などでは未受診妊婦と言うことが多い)。
そんな野良妊婦に、出産したその日の夜、遭遇してしまいました。
野良妊婦ってドラマの演出だと思っていました。
[/word_balloon]野良妊婦の割合は全体の0.5%未満と言われています。
医療や福祉関係者でない人が遭遇する割合はかなり低いです。
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私が野良妊婦に遭遇したのは下の子を出産した日の夜中、もう明け方近い頃のことです。
病室の外、廊下から聞こえた先生の怒鳴り声で私は目が覚めました。
普段の先生は「怒ることあるのか?」というくらい温和な人なのですが、
「どうして受け入れたんだよ!」
「なんでうちに来るの!」
「他の病院に行ってよ!」
こんな風に怒鳴っているんです。
驚かないわけありません。
怒りの原因が「野良妊婦」。
それも自宅で一人で出産したものの、出血が止まらずこの病院に飛び込んできたという16歳の少女(あとから聞けば高校2年生)。
トイレで出産とか、ドラマやマンガではあるシチュエーションだけど、約半日前に分娩台で出産した身としては信じられない愚行です。
ドラマやマンガでは描かれないけど、出産は「赤ちゃんをお腹から出したらおしまい」ではありません。
赤ちゃんを産んだら、次は赤ちゃんをずっと包んでいた胎盤を出します。
これを「後産」といいます。
赤ちゃんはお母さんのお腹の中にいる間、お母さんの血液から栄養をもらっています。
つまり、赤ちゃんと胎盤が体から取り出され、切り離されたら止血が必要。
何もしなかったらお母さんの体の血はボタボタ垂れ流しの状態なので失血状態になります。
つまり、医療従事者を伴わない出産は危険極まりない!
トイレに限らずきちんと消毒されていない不衛生な場所での出産も母子共に大変危険なんです。
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日本では安全な出産をするための仕組みが整っています。
安全というのはお母さんと子ども、そして病院に対する安全です。
仕組みには守らなければならないルールが存在します。
妊婦のルールは所定の定期検診を受けることです。
野良妊婦はルール違反であり、安全な出産をするための仕組みを揺るがす存在です。
そんなリスキーな存在をなぜ先生が受け入れてしまったのか。
本来、野良妊婦ちゃんをその病院が受け入れることはありませんでした。
しかし、連絡もなく夜中に病院に来た野良妊婦ちゃんを、他の出産予定の妊婦さんと間違えて夜勤のスタッフさんが招き入れちゃったそうです。
スタッフさんの話によると、当然ながら自分で出産をしたものの胎盤の処理ができず、いたるところに血を垂れ流していたそうです。
赤ちゃんは、こちらも何も処置できずに血だらけのタオルにくるまれて付き添いのお母さんが連れてきたとか。
その日お母さんは初めて娘の妊娠を知ったらしく、言葉にできないほど病院全体でパニック状態だったそうです。
こんな事態に先生は怒髪天をつく状態。
野良妊婦ちゃんはトイレに籠城(おかげでトイレは血だらけ)。
先生に怒られる野良妊婦ちゃんのお母さんはひたすら平身低頭。
やがて、
「来ちゃったものはしょうがない」
「他に受け入れる病院はないだろうから倫理上受け入れるしかない」
先生たちは腹をくくりました。
そして彼らがまずやったのは、私の産んだ子どもを私の入院している病室に隔離することでした(ここで事情をしった私)。
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野良妊婦の存在は病院全体にとって迷惑でしかありません。
定期検診を受けていない野良妊婦およびその胎児はどんな感染症をもっているか分かりません。
我が子は生後わずかな胎児、小さな不手際が一生を左右する痛手となる可能性もあるので即隔離です。
産後間もない私だって陰部に傷があります。
野良妊婦ちゃんの未知の血で汚れたトイレを使うのは、消毒したときいても戦々恐々でした。
所定の定期検診を受けていない未受診妊婦は本当に迷惑な存在です。
今回の野良妊婦ちゃんの命が助かったのはスタッフのミスという本来はないはずの幸運です。
普通ならどこの病院にも受け入れてもらせず、命を落とす可能性さえあります。
救急車を呼んでも、たらい回しとなってしまう可能性が高いです。
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さて、野良妊婦ちゃんの問題はここで終わりません。
野良妊婦ちゃんは未成年、お母さんは出産したときに娘の妊娠を知ったという家庭環境です。
「赤ちゃんの父親は?」
「赤ちゃんを育てられる環境なのか?」
この2点が重要な問題となります。
スタッフさんの話によると、父親も未成年(高3)、翌日彼と彼の両親が病院に呼ばれました。
市のこういった問題の担当者も同席し、子どもは市の施設で預かることとなったようです。
施設で育つと聞き「可哀想」と反射的に思いましたが、貧困や虐待とかのことを考えると一概に父母が育てるのが良いとは思えず。
真っ赤な他人のことながら悶々としていると、野良妊婦ちゃんとその彼氏が病院スタッフに連れられて私の病室に。
当日の騒ぎで迷惑かけたと謝罪しにきました。
私が驚いたのは二人とも「申し訳ないんだよね?」と聞きたくなるほどニコニコしていることです。
あなた(たち)病院にすっごく迷惑かけたんだよ?
あなたたち、病院に超迷惑かけたの分かってるの?
[/word_balloon]他の患者さんに何かの病気が感染したとかだったら医療裁判を起こされて病院は一発で廃業。
病院で働く人たちから職を奪い、病院を利用している地域の人たちに迷惑かけたかもしれないんです。
しかも野良妊婦ちゃんの腕には施設にいく赤ちゃんが。
本当に施設にあずける気があるの?気が変わった?
[/word_balloon]なんて聞きたい気持ちを我慢する必要もなく、本人たちが呆気なく暴露。
この子は施設に預けて、お金が貯まったら迎えに行くんです。
[/word_balloon]これから名前決めないといけないから大変なんです。
[/word_balloon]終始ニコニコ、ニコニコ。
私が唖然としてしまうほど。
こ…これから、どうするの?
お金を貯めるって…ふたりとも高校やめて働くの?
俺は今年卒業して就職するんで
[/word_balloon]私は高校卒業したら東京の大学に行きたいんです♡
[/word_balloon]ん? 子どもがきっかけで就職するんじゃないの!?
[/word_balloon]しかも野良ちゃん!なぜここで「進学」?
しかも、東京!
お金貯まった、って子ども待たせるんじゃないの?
あ、大学に行きましたか?
大学って楽しいですか?
いやいや、あんたせめて「大学出たら就職に有利なのか」とか聞くとこじゃないの?
[/word_balloon]私の印象では二人ともドラマの主人公にでもなったかのようにいまの状態に酔っている感じでした。
このとき同席していたスタッフさんと話せば、彼女も同意見で自分の感覚にそっと安堵。
まあ、自宅で出産して、血だらけになって病院に来てれば十分ドラマチックですけどね。
でもどれだけそれが非常識で、どれだけの人に迷惑かけたか。
そしてこれから先、どれだけの人に迷惑をかけるか。
分かってんのかーーー!!
[/word_balloon][su_label]ー この記事はここで終わりです -[/su_label]
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