幼稚園のイベントでママたちと話す機会は、私の知らないことを知る機会でもあります。今回は「子どもがよく転ぶ」と幼稚園の先生に言われたママがいました。
子どもが転ぶなんてよくあることでは?と思ったら、転びすぎるから障害の可能性があると言われたそうです(まだ年少さんで幼いので可能性は低い)。
”障害の可能性”は親として考えたくないことです。彼女も心配そうにしていました。今回はよく転ぶことで不安視されている『発達性強調運動障害(DCD)』について調べてみました。
参考:不器用な子どもは発達障害の可能性も!?発達性強調障害とは(NHKハートネット福祉情報総合サイト)
よく転ぶ原因は脳だったりする
子どもはよく転びます。幼稚園でも多くのママ、比較的男の子を育てているママ、は「うちの子はよく転ぶ」と苦笑しています。
しかし、ただ転ぶといっても”転ぶ原因”については注意が必要です。何かにつまずいたわけでもないのに突然転んだり、頻繁に転んだり、転んだあとの記憶がない場合は障害または病気の可能性があります。
病気の場合は筋肉の病気、神経の病気、骨の病気が考えられますが、筋肉の場合は先天性のものが多いので突然症状がでる(今ごろ親が気づく)ケースが少ないです。骨の病気の場合は股関節の異常やO脚・X脚の悪化が考えられ、こちらも突然ということは少ないです。
「何となくうちの子はよく転ぶな」で気づくケースで多いのが脳腫瘍です。脳内にできた腫瘍により脳の働きが悪くなり、バランスがとれずに転んでしまうのです(脳腫瘍の場合は転ぶだけでなく、頭痛や吐き気を訴えるケースが多い)。
”なんかいつもと転び方が違う”と、理由なく感じたら子どもの動きや症状をチェックした上で一応病院を受診してみることをおすすめします。
参考:【小児科医に聞く】子どもがよく転ぶ…実は重大な病気のサインかも?(ママの知りたいが集まるアンテナ mamatenna)
脳腫瘍といった脳の病気ではありませんが、脳の機能に障害があってよく転んでしまう子どももいます。
運動を上手く強調させられない障害
何気ない運動でも、それを正確かつスムーズにこなすには様々な機能の働きが必要になります。
例えば<床にあるボールをかがんで両手で持ち上げる運動>の場合、「ボールのある場所を目で確認する」、「目と手足を連動して動かす」、「体のバランスを取る」、「ボールを持つ両手の力の入れ具合を調節する」、「動きのタイミングを計る」など、いくつもの情報を脳が処理して、体の各機能を動かしていかなくてはいけません。
単純な動きでも私たちは様々な運動を協調させています。『協調』とは英語の”coordinate”のことで、コーディネートは日常生活でもファッションやインテリアで、<収まるところに収まった><調和している>と言った感じで使われています。
DCDはこのコーディネートが上手くできない障害です。それぞれの身体の機能に問題はないが、脳が各機能の上手にコーディネイトできず、結果として「上手に動けない」「ちぐはぐな動きになる」といった感じになってしまうのです。
「不器用」「ふざけている」に見える
DCDの乳幼児は簡単な運動がちぐはぐで一般的に理解しにくい運動をしてしまいます。そのため家族や先生は子どもが不器用だと判断したり、ふざけていると怒ってしまうことがあります。
ここで気を付けたいのが本人は決してふざけているのではないことです。本人もなぜできないのか分からず、やろうと努力しているのに出来ないジレンマに悩んでいることが多々あります。
「周囲に理解されにくい」のがこの障害の問題点です。
また、体の各機能は正常に作用しているので1つ1つのパーツの動きを確かめるような動きは正確に出来ます。例えば、手のひらを”グー”や”パー”の形にするといった単体の動きは問題なくできます。そのためこの障害は気づかれにくいといった問題点もあります。
乳幼児期に見られる症状
- 言葉が不明瞭で聞き取りにくい
- ぬりえで線にそってキレイに塗れない
- スプーンやコップが上手く使えない
- はさみが上手く使えない
- 着替えが遅い・難しい
- 階段の昇り降りが下手(何となくおかしい)
- うんちが上手く拭けない
- 三輪車に乗るのが下手
- 遊具で上手く遊べない
DCDの子どもは全体の6~10%と高い
DCDの子どもは6~10%といわれ、20人のクラスに1~2人いる計算になります。この障害は障害に見えず、不適切な対応をしてしまうことが多々あるため大人になっても50~70%の高い確率で残るといわれています。
DCDの子どもに対する不適切な対応
- ふざけている
- 怠けている
- だらしない
- 練習が足りない
- 繰り返し練習すればできるようになる
DCDは障害であることを理解し、丁寧な説明と適切なサポートが大切です。それなのに反復練習を強いるようなことをすると、挫折感や屈辱感だけを与えて結果的に子どもの自尊心を大きく損なってしまいます。
DCDの改善には大人の介入が不可欠
DCDの子どもたちは定型発達の子どものように”自然に上達”していくことは難しいので、大人が介入して具体的な説明と自然に動きが改善されるようなサポートしていくことが大切です。
- 体を動かすことは楽しいと感じさせる
- 他の子どもと比較しない
- ここはヘタでも良いと思わせる
- 小さな目標をたて達成感を感じさせる
「勝ち負け」ではなく「自分のやりたいことができる」ことを実感させることが大切です。
運動療法で障害を改善できる
運動療法で社会性の障害、実行機能の障害、学習能力等の改善ができることが近年の研究で分かってきています。
自ら動き体験することは、全ての子どもの発達の基本です。
注意欠如・多動性障害(AD/HD)の改善に関する研究ですが、幼稚園児から小学2年生の子ども202名(うち、AD/HD94名)が12週間、登校・登園前の約30分間有酸素運動した結果、次のような脳機能の改善が見られました。
- AD/HDの子どもを含めた全ての子どもの算数や国語の学習能力がアップ(脳機能も向上)
- 健常の子どもに比べAD/HDの子どもの方が脳機能が改善された
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