冬になってこたつがリビングを占拠し、冬はそこで家族団らんしながら食事もしています。
大人の高さに合わせて作られている座卓なので子どもには少し高め。
そのため子どもが肘をついて食事をするのをよく目にするようになり、「肘をつかない」と注意することが増えました。
口煩いのはイヤだろうなぁ、と思いつつも気になると毎回。
そうして何度目かの注意のときで、子どもが、「どうして肘をついちゃいけないの?」、と。
考えてみれば当然の質問。
おそらく肘をついて食事するのは体の小さな子どもにとって「体を支えるため」にも自然な姿勢。
それを禁止するには相応の理由があると思うのも自然なこと。
しかし私には「なんで」を答えられませんでした。
私にとってそれは小さい頃から身についている常識。
恥ずかしながら『なんで』と考えてみたことがなく、慌てて調べてみました。
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食事中の肘つきは不可能だった
古来、日本の食事の様式には卓はなく、腰より低い高さにある御膳、いわば(足つき)お盆に椀や皿をのせて、正座をして食べていました。
そのためお盆に肘をつく姿勢は不自然どころか食べるのもままならない、つまり『あり得ないこと』でした。
肘つきができるようになった理由
日本に西洋の文化が入ってきて、食事のときに卓を使うようになりました。
テーブルが登場して肘をつけるようになったのですが、テーブルを伝えた西洋の人たちも食事中に肘をつくとは思っていなかったかと。
なぜなら西洋はナイフとフォークを使って食事をする文化、肘をテーブルについていたらナイフとフォークを使いづらいです。
彼らの食事様式にとっても肘をつくことはあり得ないことだったのです。
あり得ないことを可能にしたのが箸×テーブルの組み合わせ。
箸の場合、肘がテーブルに固定されていても問題なく使用できます。
子どもにとっては高いあるテーブルの場合は肘をついた方が体を支えることができて楽なことさえあります。
古い習慣がマナーとして残っている
テーブルが日本の食文化に入ってきても、”食べ方”には昔からの価値観が残っているため、肘をテーブルに着くことは「あり得ない」と判断されるようです。
一度根付いた価値観を払拭することは難しいため、テーブルが基本の現代でも多くの日本人が「食事中に肘をついてはいけない」と思っています。
また価値観の中には食物、その材料となった植物や動物の命に対する感謝や敬意も含まれていると考えられます。
「なぜ肘をついてはいけないか」という回答の中には「肘をつく姿勢は感謝や敬意を表していない(命に対して失礼である)」という考えも見られました。
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マナーとは『価値観』である
Wikipediaによると「マナーとは人と人との関わりで当然その場面で”しかるべき”とされる行儀・作法のこと」とあり、価値観や道徳観と重なる点も多々あるようです。
”しかるべき”ではないこと、あり得ないことをすると『マナー違反』になります。
しかし、価値観や道徳観などでよく言われるように、”しかるべき”は人によって大きく変わります。
『価値観』には個人差がある
価値観とは状況に応じて変わるもので、その境はひどく曖昧であり、多様化となった現代社会の中では人によって合わないマナー(価値観)もあるでしょう。
しかし、その中で大多数の人が一致する価値観によるマナーのひとつが「日本古来の伝統や文化に則ったもの」です。
「食事中に肘をつかない」はそのひとつとも言えるようです。
そのため肘をついて食事する姿勢にはいくら利便性があっても「マナー違反」で片づけられます。
小数派の価値観は排除されやすい
日本古来の食事様式ではあり得ない肘をつくスタイルは、古来の価値観が子々孫々と引き継がれた現代でも「マナー違反(あり得ない)」と私たち日本人の多くが共通の認識としてもっています。
人は自分の価値観と合わないものに対して様々な感情が生まれ、とかく支持率が高い価値観の場合はそれにそぐわない価値観を嫌悪したり排除しようという心理が働きます。
大多数派による極少数派への差別といっても良いでしょう。
「食事中に肘をつかない」はかなり支持率の高い価値観です。
肘をついて食事をしている人を見ると「行儀が悪い」と周囲の人が眉を顰めるのは自然なことで、子どもがそんな風に見られるのを防ぐには「肘をつくべきではない」と教えるのが最良なのです。
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マナーは守らなくても罰則はないけれど
マナーはルールと違って、守らなかったからと言って罰則があるわけではありません。
しかし前項で述べたように、マナーを守らないことは大多数が支持する価値観を否定することです。
その結果、周囲に品格を疑われ、場合によってはその場から退場を願われるなど社会的制裁を受ける場合もあります。
こうなってしまうと罰則を受けた方が楽ではないかと思うのですが。
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子どもの肘つきを治す方法
躾や教育において私的には「言って聞かす」が理想的なのですが、肘つきに関しては価値観という曖昧なものなので言って聞かすのは難しそうです。
口煩くなるのは仕方がないと思うのですが、心理学によると叱るのは食事にも影響があるので危険。
そのため効果的な対処法としてあげられるのが『テーブルの高さを下げて肘をつきにくくする』、昔の御膳のように「肘をつくなんてあり得ない」という状況を作り出すというわけです。
子ども用のいすや座布団を使って座面をあげ、その結果テーブルの高さが子どもが座ったときの肘より低ければ肘がつきにくい状況が出来上がります。
また、肘つきは行儀悪いNo.1「犬食い」の原因にもなってしまうようなので、早く治すに限るようです。
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