花鳥風月
室町時代に時の将軍の庇護を受けて大成した能楽師・世阿弥が残した能の理論書「風姿花伝」が残した『自然の美しい風景』を意味する熟語です。
雪月花
唐の漢詩人・白居易の詩の一句「雪月花時最憶君」による語で、これも『自然の美しい景物』を意味する熟語です。
このどちらにも読まれている「花」と「月」、今回は月について。
日本では美しい風景と称賛される満月ですが、欧米では人を狂わせるといった不吉なイメージがもたれています。
日本人にとっての「月」とは何なのかまとめてみました。
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日本人にとっての月は生活の礎
私たちは太陽の出没によって繰り返される明暗、つまり昼と夜を意識した生活をしています。
照明のある現代ですら”そう”なので、火以外の灯りが基本的にはない昔はなおさら夜は暗く、月明かりは貴重であり印象的な灯りだったのでしょう。
昔の日本人は月の満ち欠けによる形や明るさの変化に大きな関心を示し、月の形によって色々な名前をつけてきました。
満ち欠けで変わる月の呼び名
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月が出るのを待つ名前が多い理由
15日目の満月を過ぎると月の出が50分ずつ遅くなっていくので、月が出てくるのを待つ様子が月の名前となっています。
月が出てくるのを躊躇っているような十六夜、月が出るのは未だか未だかと立って待つ立待月、待ちくたびれて座ってしまう居待月、もう床に入って待つから寝待月、夜も更けてしまう頃なので更待月、といった具合です。
日本文学には月が重要な要素ファクターになるものが多く、夜間の移動などサバイバルな理由を除けば恋愛のものが多いです。
月の満ち欠けは人の体に多少なりとも影響したり、満ち欠けのある月が心の機微とリンクしやすいという点もありますが、日本文学の礎である平安文学に月の描写が多い点も影響しているそうです。
平安時代の月と恋愛
平安時代の貴族の恋や結婚は夜が中心だったこともあり、恋愛模様替え描かれる歌や物語には月の描写が多いです。
平安時代には平仮名が生まれ、「枕草子」の清少納言や「源氏物語」の紫式部を筆頭に女性もいろいろ当時の貴族たちの文化を書き残しています。
当時の貴族の女性は基本的に邸から出ることはなく、恋も結婚も夜に男性が女性の邸に来る形で進行しました。
夜の移動に月明かりは重要だったため、恋する若い男女は月が出るのを今か今かと待っていたでしょう。
また、貴族の女性は侍女が常に側にいるため密かな恋愛などできるわけもなく、 「○○のところに✕✕が通っている」といった風に恋の噂は当時の人々にとって娯楽でもあります。
それが醜聞なら尚更。
そんな純愛や不倫を綴った歌や物語(実話)が多いこともあり、後半の月の名前は「待つ」が多くなったのかもしれません。
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十五夜と十三夜
日本の月見は本来、十五夜と十三夜の二夜の月を見るのが正式な風習といわれています。
どちらか一つしか見ないのは「片月見」といって縁起が悪いと言われ、特に農村部では嫌がられました。
十五夜(中秋の名月)は中国が起源
十五夜に月を愛でる風習はもともとは中国の「中秋節」が起源です。
この風習が日本に伝わった平安時代には貴族たちが月を眺めながら酒を酌み交わし、舟遊びしながら和歌を詠む「観月の宴」が催されました。
庶民が月見をするようになったのは江戸時代からです。
十三夜は日本独自の風習
一方で十三夜は日本独自のものです。
なぜ未だ欠けている十三夜の月を見るのかは不明ですが、未だ不完全なものを美しいと感じる日本人らしいと言われています。
徒然草の中には日本人の美意識がよく書かれているとありますが、月についても「月は盛りに 月は隈なきをのみ 見るものかは」という箇所もあるそうです。
十五夜と十三夜は秋の収穫祭
江戸時代になって月見の風習が庶民にも広まると、 この時期には稲が育って収穫が始まる時期だったこともあり、月見は秋の収穫を感謝する祭りとして広く知れ渡りました。
十五夜の頃は芋類の収穫時期なため、十五夜は「芋名月」ともいわれ、月見団子とともにサトイモやサツマイモを供えることがあります。
十三夜の時期は栗や豆の収穫時期なため、十三夜は「栗名月」や「豆名月」などと言われます。
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十五夜と十三夜はいつなのか?
十五夜は「旧暦の8月15日の夜」で、十三夜は「旧暦の9月13日の夜」です。
旧暦は月の満ち欠けで時を決める太陰暦でしたが、いまは太陽暦なのでそれぞれいまの日付に合わせると毎年異なります。
十五夜 | 十三夜 | |
2021年 | 9月21日 | 10月18日 |
2022年 | 9月10日 | 10月8日 |
2023年 | 9月29日 | 10月27日 |
2024年 | 9月17日 | 10月15日 |
2025年 | 10月6日 | 11月2日 |
十五夜でも満月とは限らない
2021年の十五夜は8年ぶりの満月と報道されましたが、実は、十五夜が満月であるこのの方が珍しかったりします。
太陰暦は月の満ち欠けを基準にしているため「1日の新月から始まって15日目が満月」となりそうですが、天文学では満月の月例は13.9~15.6日であるため15日が満月とは限らないのです。
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月に対するイメージは文化によって違う
日本で月といえば「美しい」「神秘的な」という良いイメージですが、欧米で月と言えば少し不気味なイメージがあるようです。
例えば、「満月はヒトの心を狂わせる」という言い伝えが合ったり、満月の夜になると狼男に変身するという話や映画があります。
月の女神lunaから派生したlunaticという言葉の意味は「狂人」「精神錯乱者」といったりもします。
月の模様の見え方(イメージ)も国によって違う
日本では「餅をつくウサギ」に見える月の模様ですが、この模様の見え方は国によって違うようです。
韓国は日本と同じ「餅をつくウサギ」で、中国は同じウサギでも餅をついているのではなく不老不死の薬をひいていると言われています。
文化や環境によるのか、南アメリカはロバ、南アメリカ・北アメリカインディアンやインドではワニ、アラビアでは吠えるライオンに見えると言います。
東ヨーロッパや北アメリカでは髪の長い女性、インドネシアでは女性が編み物をしている姿に見えるとか。
オランダでは悪行の報いとして幽閉された男の姿…一番最初にそのイメージを持った人のバックボーンを知りたいところです。
[su_label type=”info”]参考[/su_label]月の模様は何に見える?国によって違うイマジネーション | Life with the Moon
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