秋の彼岸のころ、日本のあちこちでヒガンバナが咲く風景を見ることができます。
まるで燃える炎のようにも見えるため「家に持って帰ると家が火事で燃えてしまう」という不吉な迷信もあり、以前はヒガンバナを庭に植えるという風習はあまりありませんでしたが、最近はそんな不吉な迷信も薄れて住宅地でも見るようになりました。
先日みかけたのは白いヒガンバナ。
白いヒガンバナと思っていましたが、実は「シロバナマンジュシャゲ」という別の植物でした。
[su_label type=”info”]参考[/su_label]白い彼岸花は何が違う?種類の特徴や名前、色ごとの花言葉もご紹介! | 暮らし〜の (kurashi-no.jp)
関東で白いヒガンバナを見られるのは庭先など人の手で管理できるところのみ。
原種である赤い彼岸花は強いので野生化したものをあちこちで見かけますが、関東でこの白い彼岸花は自生している姿を見ることはまずできないようです。
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ヒガンバナとは
ヒガンバナ(彼岸花、石蒜)は中国大陸原産で、日本には有史以前に渡来して、いまでは日本では北海道から南西諸島まで野生化したものが見られます。
日本のヒガンバナは種を飛ばして増える種ではないため、野生化したものであれ人の手で増やしたもののみ、そのため日本では道端や水田のあぜなど人の手の入ったところに群生しているのをよく見かけます。
ヒガンバナは多年草ですが、秋の彼岸の頃に花を咲かせ、秋の終わりに葉が伸びて翌年の夏頃に地上部を枯らすという珍しい性質があります。
ヒガンバナの別名
彼岸の頃に花を咲かせるから彼岸花と言われますが、別名では「曼殊沙華」や学名由来の「リコリス・ラジアータ」と呼ばれることもあります。
曼殊沙華は梵語で「赤い花」や「葉より先に赤花を咲かせる」という意味を持つmanjusakaの音写で、法華経の仏典に由来したものだそうです。
仏教に由来する花なため、寺院や墓地周辺に植栽されている場合も多かったようです。
このほかに地方で呼ばれる異名(地方名)は数百~1,000種類以上あると言われています。
葬式花、墓花、死人花、地獄花、幽霊花、火事花、蛇花、剃刀花、狐花、捨て子花、灯籠花、天蓋花 など不吉な別名が多い。
開花時に葉がなく、花が枯れた頃に葉が生えてくる性質から「葉見ず花見ず」の別名も有する。
ヒガンバナを英語で言うと
英語では「Red spider lily」 「spider lily」 といいます。
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ヒガンバナには毒があるって本当?
ヒガンバナには有毒植物で、食べるとよだれ・吐き気・腹痛を伴う下痢を起こし、重度の中毒の場合は中枢神経のマヒを起こして死に至る場合もあります。
特に鱗茎※には作用の激しいアルカロイドを約1%(うちリコリンが約50%)含んでいます。
※根本にある玉葱のような肥大化して球状になった茎
ヒガンバナは毒があるから水田の畦に植えられた
ネズミ、モグラ※、虫など水田に穴を作り水漏れを起こさせるなど水田を荒らす動物がヒガンバナの鱗茎の毒を忌避するため、先人は水田や田畑周辺にヒガンバナを植えられたと言われています。
※モグラは肉食であるが、エサとなるミミズがヒガンバナを忌避するため、結果としてモグラ被害が減る
ヒガンバナを墓地周辺に植えた理由
ヒガンバナは仏教に由来する花なため、寺院や墓地周辺に植栽されている場合も多かったようです。
また、ヒガンバナの毒の効果で虫よけ、また土葬した死体が動物によって荒らされるのを防ぐ効果があるとも考えられていたようです。
ヒガンバナは救飢植物でもあった?
ヒガンバナの鱗茎に含まれるリコリンは水溶性なため、すり潰して長時間水に晒せば毒を無害化できて食べることができたそうです。
その性質もあり、古い時代には飢饉の際の飢えを救ってきた救飢植物として考えられてきました(無毒化する方法は確立していないため危険ではある)。
古い時代といってもさほど古代ではなく、第二次世界大戦中などの戦時中や非常時においてヒガンバナは食用とされたようです。
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ヒガンバナは石蒜という名の生薬
葉が枯れ始めた頃に掘り出したヒガンバナの鱗茎(ひげ根を取って水洗いしたもの)は「石蒜」という名の生薬であり、往年は製薬原料に用いられたそうです。
民間では外用薬としての利用。
すりおろした球根にトウゴマと混ぜたものを布などに塗り付け、両足裏の一面に湿布して包帯を巻いておくとその利尿作用で浮腫みがとれたといいます。
肋膜炎、腹膜炎、腎臓病などの水腫の治療に用いられたようです(毒性もあるため素人の民間療法は危険)。
埼玉県内にあるヒガンバナの名所
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ヒガンバナが群生する名所では、ヒガンバナが一斉に花く姿を見ることができますが、この「一斉に咲く」には秘密があります。
ヒガンバナが一斉に咲く姿を見られる意外な理由
ヒガンバナが日本のヒガンバナは種をつけることができず球根の株別れによる繁殖か人為的な移植のみで増えていったと考えられるため、群生するヒガンバナは全て同一のもの、つまりクローンといえます。
同じ遺伝子を持っているため同じ環境下では開花時期が同じになる、群生したヒガンバナが一斉に咲くのは全てが一個体のクローンだからというわけです。
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