漆器(lacquer)とは木材や紙に漆を塗り重ねて作られた伝統工芸品です。
漆を表面に塗ることで土台が長持ちするようになり、歴史的にアジアを中心とした世界の国々で汁椀といった食器や箪笥や仏壇といった家具など幅広く使用されてきました。
日本国内では、石川県の輪島塗が有名です。
漆器で利用される土台(素地)は木、竹、紙、金属などがあり、現代では合成樹脂が利用されています。
また塗布する漆も本来はウルシノキから採った樹液から作られた天然漆のみでしたが、現代では漆にセルロースナノファイバーなどの合成樹脂を混ぜて光沢や強度を高めた塗料が使われることがあります。
今回購入した弁当箱は漆器ですが、細かく区分するとPETとABS樹脂を素地としウレタン塗料を塗った合成漆器です。
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漆器の歴史
漆器は縄文時代から日本にあった
漆器は縄文時代からあったと研究の結果で分かっています。
漆塗りは7400年前に中国で生まれた技術で、ウルシノキ(漆木)と共に大陸から日本に伝わったと考えられてきましたが、国内で出土した漆器や漆の枝を放射性炭素年代測定した結果、漆器は約9000年前のもの、漆の枝は世界最古の約12600年前のものと確認されました。
古代日本の漆工の傑作と言われるのが飛鳥時代に作られた法隆寺の玉虫厨子です。
漆器の文化が急成長した平安時代
漆器に使われる日本独自の蒔絵の技法が色々開発され、螺鈿(らでん)と共に技術が急発達したのが平安時代です。
蒔絵と螺鈿は漆工の装飾技法として盛んに併用されました。これが現代まで続く日本の漆器の製法やデザインの方向性の基です。
武士の時代になると漆塗りは鞍の装飾として人気が出ました。この時代に漆を立体的に見せる技法(堆朱)が中国から伝わりましたが、日本の職人はもっと簡単に立体造形にする製法(鎌倉彫)を開発しました。
漆器は南蛮貿易で欧米に輸出
漆器は安土桃山時代に始まった南蛮貿易により海外へと拡がり、漆器産業は急成長しました。
日本で作られたヨーロッパ向けの漆器(南蛮漆器)は、ヨーロッパでステータスシンボルの1つとなりました。
輪島塗や会津塗など地域の特産品となった始まりは江戸時代です。漆工は江戸時代に藩の特産品として奨励されました。
明治時代になると漆器は西洋諸国に国家の近代化をアピールするための殖産興業の1つとなり国の威信をかけて極めて高度な漆塗りの工芸品が輸出されました。
欧米で開催される万博博覧会にも陶磁器や七宝焼きと一緒に漆器も出展され、これらの影響で海外の美術館・博物館にはたくさんの漆塗りの工芸品が収蔵されています。
漆器(漆工技術)は戦後に衰退し始める
漆器の文化は殖産産業政策の終了や私たちの生活の西洋化により戦後衰退し始めます。
そこで国は、松田権六や室瀬和美を代表とする漆工家を人間国宝に指定するなどして振興を図りました。
一方で、1980年代から幕末~明治にかけて海外に流出した最高品質の漆工品を買い戻す動きが始まり、2000年にはこれらを収蔵した清水三年坂美術館が開設されました。これにより日本屋内で明治工芸が飛躍的に再評価されています。
人気コミック「鬼滅の刃」の影響で大正デザインに人気が出ているため、古き良き時代を象徴する漆器の人気がさらに高まっているようです。
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漆器の普及を目指した合成漆器
漆器(天然漆器)に比べて価格が安い
漆器(天然漆器)とは違い合成漆器は素地が樹脂であり型に流し込んで成型し、エアスプレーで塗装できることから人件費や材料費が大幅に削減、さらに短時間で大量生産できるため安く提供されます。
土台は型に樹脂を流し込んで成型、塗装はエアスプレーなどコストや人件費を節約できます。
天然の木材や漆は入手や扱いが難しいため、天然漆器はどうしても価格が高くなってしまいます。
漆器(天然漆器)の三大デメリットを解決
漆器(天然漆器)は電子レンジ・食洗器・冷蔵庫で使えませんが、合成漆器はこれらで使用することができます(現代の食生活に合っている)。
天然漆器は熱や紫外線に弱く変色してしまうため、電子レンジでの加熱は現金、乾燥した冷蔵庫内で使用すると割れや変形を起こしてしまいます。
合成漆器は素材が合成樹脂なので使い方はタッパーと同じです。
合成漆器は漆器の普及が目的です。
使い勝手の良さと、器の形やコンピューターを使って蒔絵をするなどデザインの自由度が高いことが合成漆器の強みです。
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