横綱になって得る特権と負う責務

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大関・稀勢の里の横綱昇進が決まり、19年ぶりの日本人横綱の登場に相撲界(角界)が盛り上がっています。”横綱”は社会的にも重要視されていますが、それは相撲が国技だからでしょうか?

全力士のトップである”横綱”について基本的なこと、昇進伝達式、横綱の特権と責務を中心にまとめてみました。

横綱昇進を伝える儀式「昇進伝達式」

2017年1月25日に稀勢の里の横綱昇進伝達式が行われます。

新横綱誕生、それも19年振りの日本人横綱の誕生に多くの人が喜びを露わにしています。稀勢の里の土俵入りも雲竜型と決まり、土俵入りを指導することになった芝田山親方は同じ二所ノ関一門の後輩横綱である稀勢の里に感謝を語ったそうです。

昇進伝達式までの流れ

横綱審議委員会への諮問があると、委員会は内規に照らして力士の品格・力量などを審査します。そこで出席委員の3分の2以上の賛成があれば日本相撲協会の理事長に横綱として推薦されます。理事長は臨時理事会を招集し、理事会で決議されて横綱として推挙されます。

稀勢の里関の場合は1月23日に出席委員8人の全会一致で理事会に推薦されました。理事会は横綱審議会の意見を尊重するとされているため、横綱審議会の推薦は確定と考えられています。そのため理事会の決議は1月25日ですが、1月23日以降「稀勢の里が横綱になる」と報道されるのです。

理事会で決議されると、日本相撲協会の使者が新横綱の大関の元に訪れます(東京場所ならは所属部屋、地方場所なら旅館や神社など)。ここで新横綱に推挙された旨を伝える”昇進伝達式”が行われます。昇進伝達式では大関とその両脇に所属部屋の親方夫妻がそろって使者を出迎え、伝達に対して「謹んでお受けいたします」と返答したあと決意表明のコメントを述べます。

横綱の向上は四字熟語が必須?

若貴ブームを生んだ貴乃花と若乃花が昇進伝達式の口上(決意表明のコメント)で四字熟語を使用したことから、伝達式の口上では四字熟語が好まれてきました。

貴乃花の大関昇進では「不撓不屈」、横綱昇進では「不惜身命」、若乃花の大関昇進では「一意専心」、横綱昇進では「堅忍不抜」でした。

しかし、四字熟語を入れるのが決まりではありません。さらに貴ノ浪が大関昇進したときに使った「勇往邁進」以降は「一生懸命」や「全身全霊」など一般的に知られている四字熟語が使用されるようになったと個人的に感じます。

今回の稀勢の里のコメントも注目されています。

それも稀勢の里の名の由来になったのが永平寺のお坊さんの言葉だとかで、仏教の言葉なども採用するのではと思われているからです。稀勢の里自身は「自分をそのまま表現したい」とコメントしているようです。因みに稀勢の里は大関昇進のときは「大関の名を汚さぬよう、精進します」と四字熟語を使いませんでした。

横綱は奉納土俵入りで土俵入りを初披露

横綱に推挙された後、初めて土俵入りを披露するのは横綱推挙式と共に明治神宮で行われる”奉納土俵入り”です。力士が化粧まわしをつけて顔見世として行われる”土俵入り”とは違い、横綱の土俵入りは露払い(つゆはらい)と太刀持ちを従えて単独で土俵入りを披露します(露払い・太刀持ちは横綱と同じ相撲部屋に所属している関脇以下の兄弟弟子が務める)。

新横綱が誕生すると横綱力士碑のある富岡八幡宮(東京都江東区、別名・深川八幡)や野見宿禰神社(東京都墨田区)でも奉納土俵入りが行われます。

富岡八幡宮…江戸勧進相撲の発祥の地
野見宿禰神社…相撲の始祖とされる野見宿禰が祀られている

土俵入りの型は雲竜型と不知火型がありますが、稀勢の里は雲竜型に決定したそうです。雲竜型は二所ノ関一門伝統の型で、初代若乃花や貴乃花(現親方)らが締めてきた形です。先代師匠・鳴戸親方は不知火型でしたが、先代は初代若乃花が創設した二子山部屋から横綱に昇進したこともあり、彼の相撲の源流である二所ノ関一門伝統の型である雲竜型を選んだようです。

力士の最高位「横綱」の特権と責務

”横綱”は大相撲の力士の番付(格付け)における最高位の称号で、横綱という呼称の由来になった白麻製の綱は、横綱だけが腰に締めることを赦されています。

【横綱の特権と責務】

  • 現役を退くまで横綱の地位が保証される
  • 常に最高レベルの相撲内容・成績が要求される
  • 10~15人の付き人がつく
  • 支度部屋に明荷(あけに)を3つ持ちこめる

相撲界は上下関係が厳しく、付き人や支度部屋に持ち込む明荷の数などルールは明確です。

明荷とは化粧まわし、締め込み、浴衣などを入れた荷物のことで、本場所では初日に運び込んで千秋楽まで置きっ放しです。横綱が3つ持ち込める明荷ですが、十両以上の関取力士は支度部屋に1つしか持ちこむことが許されていません。幕下以下は明荷を使用することさえ許されていません。

横綱を「日下開山(ひのしたかいさん)」と呼ぶこともあります。

相撲に限らず武芸や芸事において人より優れている人を「天下一」「天下無双」と呼びますが、「日下開山」にはこれらと同じ意味があります(江戸時代に”天下”という単語を使えなくなったため、新たに日下開山という表現が作られた)。

相撲は神事でもあります。

横綱は神の依り代とされ、横綱の土俵入りは現役横綱の義務です(病気・故障等の場合は除く)。横綱土俵入りは式典として最も華があり、横綱の権威が示されます。

現行制度では横綱からの降格はなく、現役引退でしか横綱の地位を降りることはできません。横綱になる力士にはそれに相応しい品格と力量が要求されます。

稀勢の里は2019年1月に横綱のワースト記録である8連敗を記録したため、現役引退を決意しました。

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