約40年ぶりに相続法が大きく変化するということで話題になっています。今回の改訂で配偶者の権利と、被相続人(故人、死んでしまった人)の介護をしていた人の権利の補償が手厚くなりました。
未だ私たち夫婦は共に30代、どちらの両親も元気なので介護の心配もない、実際に”相続”というのは実感がありません。ただいずれは直面する問題だと思っています。
『相続ありき』で何をするわけではありませんが、”無知は不幸につながる”こともあるのできちんと知識は仕入れておこうと思っています。
現代の社会環境に合わせた相続法改正
相続に関するトラブルを防ぐために『相続法』(民法)があります。
相続法には「誰が相続人となるのか」「何が遺産になるのか」「被相続人の権利義務の継承方法」など、相続に関する基本的なことが決められています。
相続法が最後に大きく改正されたのは1980年、アラフォーの私が生まれた頃です。それから大きな改正は全くありませんでした。2018年7月の改正は高齢化社会など社会環境の変化に対応していくための見直しです。
相続法の4つの大きな変更点
- 配偶者居住権を創設
- 自筆証書遺言に添付する財産目録の作成がパソコンで可能に
- 法務局で自筆証書による遺言書が保管可能に
- 被相続人の介護や看病で貢献した親族は金銭要求が可能に
参考:「約40年ぶりに変わる“相続法”!相続の何が、どう変わる?」(政府広報オンライン 2018年9月26日)
(1)配偶者居住権を創設
『配偶者居住権』は、配偶者が相続開始時に被相続人が所有する建物に住んでいた場合に、終身または一定期間、その建物を無償で使用することができる権利です。期間は基本的に終身です。
従来は建物についての権利は「所有権」のみでした。 今回の改訂で建物についての権利が「負担付所有権」と「配偶者居住権」に分かれました(それぞれ評価して資産価値を算出)。「配偶者居住権」は”被相続人の死後も自宅に住み続けることができる権利”ですが、所有権ではないため自宅を勝手に売却したり、自由に人に貸したりすることができません(その分評価額を低く抑えることができる)。
【例】妻と2人の子どもがいるAさんが亡くなった場合の遺産相続。遺産は自宅(資産価値2,000万円)と預貯金(600万円)。
配偶者(妻)が遺産の1/2、子どもたちが合わせて1/2(1/4ずつ)を相続する。このルールは従来から変更なし。
従来は自宅の所有権を妻が相続するには、子どもたちが相続する預貯金600万円とは別に700万円が必要。
今回の改訂で自宅の権利が2つに分かれると同時に価値が2つに分かれるため、負担付所有権(1,000万円)と配偶者居住権(1,000万円)の場合、妻は配偶者居住権と預貯金300万円を相続することができます。
このように配偶者居住権が登場したことで、配偶者は自宅に住み続けながら預貯金など他の財産もより多く取得できるようになり、その後の生活の安定を図ることができます。
(2)遺言書の財産目録の作成がパソコンで可能に
オール自書だった遺言書に、パソコンなどで作製した自書によらない書面を添付できるようなり、遺言書の作成負担がかなり軽減されました。
これまで”自筆”証書遺言は、添付する目録も含め、全文を自書して作成する必要がありました。今回の改訂では遺言書に添付する相続財産の目録については、パソコンで作成した目録や通帳のコピーなどで良くなりました(直筆署名や押印は必要)。
(3)法務局で遺言書を保管してくれる
自筆証書遺言をより利用しやすくするため、法務局で自筆証書による遺言書を保管する制度(遺言書保管法)が創設されます 。
自筆証書による遺言書は自宅で保管されることが多く、せっかく作成しても紛失したり、捨てられてしまったり、書き換えられたりするおそれがあるなどの問題がありました。この制度はこのようなトラブルの防止を目的としています。
法務局で遺言書を保管することになるため、裁判所での検認が不要となりました。
相続人は相続開始後いつでも遺言書の写しを請求または閲覧でき(検認不要)、相続人の1人が遺言書の写しの請求または閲覧を申請すると他の相続人全員にその旨が通知されます(遺言書の内容は通知されない)。
遺言書保管法の施行期日は,施行期日を定める政令において2020年7月10日(金)と定められました。なお,施行前には,法務局に対して遺言書の保管を申請することはできません 。参考:法務局における遺言書の保管等に関する法律について(法務省公式サイト)
(4)介護や看病に貢献した親族は金銭請求が可能
被相続人の介護や看病をしていた”相続人ではない親族(例えば「長男の嫁」など)”も、相続人に対して金銭の請求をすることができるようなりました。
但し、無償で介護や看病に貢献し、被相続人の財産の維持または増加について特別な寄与した場合です。”献身的な介護”をしていたかどうかについては客観的な判断材料が必要なので、介護時間や内容などをノートに書き留めておくなどの必要があります。
今回の改訂では介護や看病に貢献した親族のみが対象です。お友だちやヘルパーさんに遺産を残すには被相続人の遺言書が必要です。
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