ハンセン病の歴史から学ぶ新型コロナウイルスの感染拡大で蔓延する不安から生まれる差別感情

感染病が蔓延すると不安に基づく偏見が生まれることが分かります。

2020年2月上旬は中国系の人に対する差別が中心でしたが、2020年2月中旬には日本がワースト2位の感染者数ということで※、パリにある日本食店の外に「コロナウイルス」と落書きされるなど日本人も差別の対象となっています。

厚生労働省公式サイトでは新型コロナウイルス感染症の現在の情報が発表されています。

今回の新型コロナウイルスによる症状は比較的軽い人が多いとのこと(持病等がある場合は重篤化することも多い)。中国で死者が2000人を超えたので※”怖い”という印象が前面にでてきますが、きちんとした環境で治療が受けられれば必要以上に怖がる必要はないようです。

但し、特効薬はないのでウイルスの増殖を抑制しつつ自己の免疫機能で対症療法している状態。ウイルスが根絶されるまでに時間はかかるため、入院期間は比較的長い状態です※。

2人の小さな子どもの育児中の私。「新型肺炎にかかって新宿の病院に長々入院するわけにはいかない」と毎日しっかり貴重なマスクで口と鼻を防護しています。

※2020年2月20日の情報

ハンセン病は人類の歴史上最も古くから恐れられた感染症

無料写真素材なら【写真AC】

ハンセン病は人類の歴史上もっとも古くから知られ、恐れられてきた病気の1つです。らい菌(Mycobacterium leprae)が主に皮膚と神経を侵す慢性の感染症で、 1873年にらい菌を発見したノルウェーのアルマウェル・ハンセン医師の名前から病名が付けられました。

現代ではハンセン病は治療法が確立している完治する病気です。初期にきちんと治療をすれば障害も残りません。

ただし、ハンセン病の感染経路はまだはっきりとはわかっていません。治療を受けていない患者の飛沫を介して感染するものと考えられています(ハンセン病の感染力は弱くほとんどの人は自然の免疫で退治され発症しない)。

今回の新型コロナウイルスの感染は飛沫感染です。感染力の強さは分かりませんが、手洗い・アルコール消毒・マスクの着用等であらかた防げると報じられています。

ハンセン病は古代中国の書物やキリスト教の聖書に登場

無料写真素材なら【写真AC】

ハンセン病にかかると皮膚に白または赤・赤褐色の斑紋が現れます(初期症状)。このまま治療せずに放っておくと体が変形を起こします。そんな外見の変化と感染に対する恐れから、ハンセン病患者は社会的烙印を押されてきました。

ハンセン病の歴史は長く、古代中国の文書、インドの古典、キリスト教の聖書など数々の古い文献にハンセン病と思わしき『天刑』『業病』『呪い』が登場します。日本でも日本書紀にハンセン病と思わしき記述があります。

『業病』や『天刑病』などは聞きなれない言葉ですが、これは「前世の罪の報い、もしくは悪しき血筋による病」という迷信です。今では迷信だと鼻で笑い飛ばせますが、当時はこの『業病』を発病することは”罪悪を犯すことと同義”と考えられていました。

日本のハンセン病患者は家族に迷惑がかからないように放浪生活を送る人が多く、明治時代になってハンセン病(ライ病)は隔離政策が行われ患者の人権は著しく侵害されました。このような患者迫害が最も激しかった時期は昭和10年代の無癩県運動期、松本清張さんの『砂の器』はこの時代のハンセン病患者迫害に対する恐怖心が全ての根本になって描かれています。

治療法が確立していない感染症に対する不安

無料写真素材なら【写真AC】

ハンセン病は見た目が恐怖をあおる原因の一翼を担いましたが、今回の新型コロナウイルスによる新型肺炎に対する不安感は『治療法が確立していないこと』です。インフルエンザがそうですが「ワクチンがある」というのは感染症に対する恐怖心をグッと低くしてくれます(ワクチン接種という予防手段もある)。

新型コロナウイルスに対する有効薬の開発が現在は進められています。中国やタイではSARSの治験経験から抗HIV薬とインフルエンザ薬を複数投与して一定の成果を上げている状態とのこと。この報を受けて日本でも同治療を実施、臨床に協力した30代の女性は一時期悪化したもののその後症状は改善しています。

https://xn--k9jc5i.com/housekeeping/kenko/2019cov-antihiv/

ハンセン病治療に対する有効策が確認されたのは1943年。アメリカで「プロミン」がハンセン病治療に有効であることが確認されたのを皮切りに治療薬の開発が進み、1981年にWHOは多剤併用療法がハンセン病には最善の治療法であると勧告しました。

現代ではハンセン病は完全に治る病気です。ハンセン病回復者はもちろん、治療中の患者からも感染する可能性は皆無です。しかし、ハンセン病に対する偏見は未だ残っています。原因は社会の無知、誤解、無関心、そして根拠のない恐れです。

目に見えないウイルスに対する不安は負の感情を生む

今回の新型コロナウイルスの感染拡大に関して、国連のグテレス事務総長は2020年2月4日の記者会見で「人種を理由にした差別や人権侵害を懸念している」と表明しています。感染拡大に伴って一部の地域で中国やアジア出身者への差別が生じているからです。

米国ニューヨークでは「マスクを着けた女性が差別的な言葉を浴びせられて殴られた」とみられる動画が拡散されニュースになっています

マスクをつけている人に対するイメージは日本と欧米は真逆です。日本では感染予防で健康な人も着用しますが、欧米の人は健康な人はマスクの着用不要(=マスクをしている人は罹患者)と考えています。

市警は「これはヘイトクライム(憎悪犯罪)の可能性がある」として捜査に乗り出しています( 映像と周辺情報だけでは状況が判然としないためあくまでも可能性)。ニューヨークは人種や民族の多様性に富む一方、人種や民族、宗教を理由としたヘイトクライムが後を絶ちません。

今回の『コロナパニック』を『黄禍論』に結び付ける人も少なくなく、今回の新型コロナウイルスは人の根底にある異人種に対する恐怖心をむき出しにしつつあるようです。

黄色人種が勢力を強くし、白色人種に与えるという災禍。アジア人排斥・抑圧の理論としてしばしば持ち出されたが、日清戦争後ドイツ皇帝ウィルヘルム2世が、三国干渉を正当化するために主張した黄禍論が有名

黄禍(コウカ)とは|コトバンク
スポンサードリンク

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください