2023年4月1日から全ての自転車利用者にヘルメットの着用が義務付けられることが20日の閣議で決定しました(罰則はないため『努力義務』となる)。
そし実際にヘルメット着用義務化が施行された結果、自転車通学や通勤の人はヘルメットを着用していることが多い印象です。地元の中学校は校則で着用が義務だったようですが、この改正により地元の高校も着用を高速で義務付けたそうです。
そして着用義務化から1ヵ月ほど経ち、大人用ヘルメットが品薄状態だそうです。
販売店やメーカーからは「需要増加に追いつけない」との声が聞かれ、購入しづらい状況は秋まで続くとの見方も出ているそうです。
大人用自転車ヘルメット
インターネットで購入する場合、落下物などに備える保護帽(産業用)を購入してしまう事例が発生しています(産業用保護帽では転倒時の頭や顔面への衝撃を軽減する機能が不適当)。
一般財団法人・全日本交通安全協会は「安全性が認証されたものなど、(SGマークやCEマークなど)基準をクリアした自転車用のものをかぶってほしい」としているそうです。
参考:自転車の着用が義務化されたヘルメットに必要な規格や注意点について
道路交通法の改定内容
今回改訂されるのは道路交通法第63条の11です。
改正前
【児童又は幼児を保護する責任のある者の遵守事項】
児童又は幼児を保護する責任のある者は、児童又は幼児を自転車に乗車させるときは、当該児童又は幼児に乗車用ヘルメットをかぶらせるように努めなければいけない。
改正後
【自転車の運転者等の遵守事項】
1.自転車の運転者は、乗車用ヘルメットをかぶるよう努めなければならない。
2.自転車の運転者は、他人を当該自転車に乗車させるときは、当該他人に乗車用ヘルメットをかぶらせるように努めなければいけない。
3.児童又は幼児を保護する責任のある者は、児童又は幼児が自転車を運転するときは、当該児童又は幼児に乗車用ヘルメットをかぶらせるように努めなければいけない。
「努力義務」に対する刑事罰と民事罰
今回の改正では、ヘルメット着用は「努力義務」であるためヘルメットを着用せずに自転車に乗っても、それが何歳でも罪に問われることはありません。
この罪に問うことを一般的に「刑事罰」と言いますが、『罰』には刑事罰の他に「民事罰」があります。民事裁判では「事故のときにヘルメットを着用していなかったこと」が賠償結果に影響を与えられる可能性があります。
そのため、自転車保険や賠償結果に備えるためといっても過言ではない個人賠償責任保険などの条件に「ヘルメット着用時」といった条件が追加される可能性が大きくあります(ヘルメットを着用せずに自転車に乗った場合は保障対象外など)。
ヘルメット着用義務化の背景
ヘルメットの有用性について
2017年~2021年(5年間)の事故を分析した結果、自転車乗車中の事故で亡くなった人(2,145人)のうち、約58%の1,237人が頭部に致命傷を負って亡くなっています。
また、誘死率(事故で死傷した人のうち亡くなった人の数)は、ヘルメット着用者が0.26%に対し、非着用者は0.59%で2倍違うことがわかっています。
2020年7月のヘルメットの着用率
自転車乗車時のヘルメット着用については自治体ごとの対応となっているが、今回の法律改訂で全国一律で義務化することで着用促進になることが望まれています。
2020年7月に自転車ヘルメット委員会が調査した結果、ヘルメットの着用率(全国平均)は11.2%。年齢別にみると13歳未満が63.1%に対し、13歳以上の着用率は7.2%です。
自転車の保険とヘルメットの関係
埼玉県には自転車損害に関する保険(または相当の補償)に加入する義務があります。
詳しくは「『自転車損害保険』への加入義務 」を読んでください。
自転車事故を起こしたときの補償、保険や契約内容によりますが本人のケガや相手の損失を補償するための保険ですが、今後ヘルメットを着用が一般化すれば過失相殺が適用される事例が発生する可能性があります。
その根拠は過去の裁判例です。
2019年3月27日
事故当時12歳の児童がヘルメット不着用で自転車を運転して事故に遭い、脳挫傷等を受傷した事例において裁判所は、
・ヘルメットの着用は『努力義務』である
・事故当時、ヘルメットの着用は一般化していたとも認められない
・ヘルメット未着用は(被害児童に)不利に斟酌すべき過失と評価するのは相当でない
2019年10月31日
事故当時8歳の児童がヘルメット不着用で自転車を運転して事故に遭い、急性硬膜外血種、頭蓋骨骨折等を受傷した事例において裁判所は、
・児童のヘルメット着装が定着しているとはいえない(情勢に照らしてみて)
・ヘルメット未着用は過失割合の認定において影響を及ぼさない
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