株式の譲渡や配当金で得た所得は申告分離課税といって他の所得とは別のものとして税金が徴収されます。特定口座の源泉徴収「あり」と「なし」のどちらが得かまとめてみました。
申告分離課税とは?
労働や売買(譲渡)で得た収入は全て次のいずれかの所得に分類されます。全ての所得は課税対象となります。
- 利子所得
- 配当所得
- 不動産所得
- 事業所得
- 給与所得
- 退職所得
- 山林所得 ←総合課税の対象外
- 譲渡所得 ←総合課税の対象外(一部)
- 一時所得
- 雑所得
(8)に該当する株式投資や配当金で得た利益(所得)については他の所得とは別の税率で個別に納税額が算出されます。この他の所得とは別に税率を計算する制度を「分離申告課税」といいます。
特定口座を選ぶメリット
株式投資をするときは証券会社に口座を作らなくてはいけません(投資信託については銀行でも取扱いあり)。証券会社の口座には特定口座と一般口座があります。
特定口座を利用すると毎年1月1日から12月31日までの全取引の譲渡損益を記録し、必要な計算をして『特定口座年間取引報告書』を作成してくれます(一般口座は作成してもらえません)。この報告書で年間の総利益が算出されていれば、確定申告の書類にその利益を転記するだけで済みます。
源泉徴収ありにすれば確定申告不要
源泉徴収がある特定口座の場合、損益通算をして確定した利益から税額を計算し、証券会社が必要な納税額を自動的に徴収しあなたの代わりに申告と納税してくれます。
- 確定申告する必要なし
- 自分で納税する必要なし
源泉徴収なしの会社員には20万円の特別枠
源泉徴収がない特定口座の場合、証券会社は代わりに申告も納税もしてくれません。
- 確定申告が必要
- 自分で納税する必要あり
但し、会社員で給与所得がある人は条件付き(”年間の譲渡益が20万円以下”という条件を満たせば)で確定申告と納税が免除されています。
確定申告をあえてするメリット
”源泉徴収あり”の特定口座を利用していてもあえて確定申告をすることで得をするケースもあります(逆に損することもあるので注意が必要)。
損益通算をすることができる
複数の証券会社(口座)で取引をしているとき、例えば証券会社Aの口座では100万円の利益が出て証券会社Bの口座では20万円の損失が出たとします。
確定申告をしないと証券会社Aの利益と証券会社Bの損失は別々に計算され、あなたは100万円の利益を得たと見なされ課税対象額は100万円となります。
↓
確定申告をすると証券会社Aの利益と証券会社Bの損失は損益通算され、あなたは80万円の利益を得たと見なされ課税対象額は80万円となります。=納税額が下がる
損失繰越控除ができる
2017年の年間取引がマイナス(損失)で終わった、例えば100万円の損失で終わったとします。
確定申告をしないと損失100万円で2017年の納税額は0円となります。2018年、2019年、2020年は別のものであり、それぞれの年の損益で計算されます。
↓
確定申告をすると損失100万円で2017年の納税額は0円となり、マイナス100万円分の損失は翌年以後3年間にわたって控除されます。つまり例えば翌年の2018年がプラス100万円の利益となった場合、2017年の100万円損失と相殺されて2018年も納税額は0円になります。=納税額が下がる(還付される)
所得金額によっては還付金を受け取れる
株式投資の譲渡益と配当金以外に所得がない場合、譲渡益が一定額以下の場合は源泉徴収された税金を還付してもらえます。具体例としては譲渡益が基礎控除額である38万円以下の場合、厳選された所得税と市民税を還付してもらえます。=納税額が下がる(還付される)
確定申告をすることで扶養から外れる?
配偶者や家族に扶養されている人は損をすることがあるので注意が必要です(被扶養者だけでなく扶養している人の税金などにも影響を与えることもあります)。
配偶者や家族の扶養に入るには所得の条件があります。この”所得”には原則として源泉徴収ありの特定口座で得た利益は含まれません。しかしこの利益について確定申告をしてしまうと他の所得と合算されることになるため、扶養の判定に使用される所得が大きく変化してしまいます。
扶養の対象から外れると扶養している配偶者や家族の控除から配偶者控除や扶養控除がなくなり、彼らの納税額がアップします。さらに健康保険の被扶養者から外れると保険料の支払いが必要になり負担が一気にアップしてしまいます。
被扶養者は源泉徴収ありの特定口座で株式投資し、確定申告はしないことをおすすめします(損失が出て確定申告をするときは要注意)。
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