4月27日の記事「子どもの急性肝炎、原因になぜか「アデノウイルス」が浮上」の続編です。
5月13日時点で分かっていることをまとめました。
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最新情報(5月10日時点)
・欧米を中心に、27カ国で約450人確認(4月25日比+280人)
・患者の年齢は10歳未満が大多数で、およそ半数は3歳から5歳
・日本国内では疑いのある患者は7人のところ、新たに5人追加で計12人(このうち1人にアデノウイルスが検出)
※厚生労働省は各地の自治体に対し、2021年10月まで遡っての調査を指示
・肝移植を受ける必要があったケースや亡くなったケースはない。
・先に発見された患者7人について、5人はすでに退院済み)
・国立感染症研究所は「コロナが流行することで肝炎のリスクが高まると言うのは時期尚早」と発言。
「原因不明の急性肝炎」の定義
現在世界中で発見されている「原因不明の子どもの急性肝炎」の定義は、
・A型からE型まで5種類ある肝炎ウイルスが検出されないのに肝炎になっている
・検査で肝臓の酵素の値が高くなっていた16歳までの子どもは「疑いあり」とする
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イギリスの保健当局の意見(5月6日時点)
イギリスの保健当局が出した最も有力な原因(仮説)は「アデノウイルスの関与」。
検査を受けた126人のうち91人(72%)からアデノウイルスが検出されたのが根拠のようです(血液中から検出されるケースが多い)。
新型コロナウイルスについて
検査をうけた132人のうち24人(18%)から新型コロナウイルスが検出されていることから、新型コロナウイルスの関与についても調査中。
過去にアデノウイルスで急性肝炎を起こす事例がない点について
イギリス保険局は「アデノウイルスによる異常な反応」(仮説)。
この異常な反応が起きた原因(仮説)として
・新型コロナのパンデミックの影響でアデノウイルスにさらされてこなかったから
・新型コロナウイルスに感染した上で、アデノウイルスにも感染したから(同時感染含む)
・アデノウイルスと肝炎の関係について今まで知られていなかっただけ
・重い肝炎を引き起こす新型のアデノウイルス
・新型コロナウイルス感染症の後遺症 など
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京都大・西浦教授らの意見
京都大の西浦博教授らのチームは「小児の急性肝炎と新型コロナウイルスのオミクロン株感染の関連」を分析。
39カ国のデータを調べた結果、肝炎の報告があった国ではオミクロン株の累積感染者が多かったことが判明。
その結果から西浦教授が出したのは(コロナウイルスとアデノウイルスに関連がある仮説が前提)、
・新型コロナウイルス感染が先行した後にアデノウイルス感染が起きることで肝炎のリスクが高まる(3歳以下の小児中心)
・小児肝炎の予防のために、オミクロン株の流行制御の慎重な検討が望ましい
感染症危機管理研究センター長の意見
感染症危機管理研究の斎藤智也センター長は次のような仮説を指摘。
・アデノウイルスが原因だったとした場合、コロナ禍で小児がアデノウイルスにさらされる時期が遅くなったため免疫反応が激しくなっている
また、アデノウイルスには手洗いやマスクの着用といった感染対策が有効とも発言しているようです。
日本小児肝臓研究会と日本小児栄養消化器肝臓学会の合同声明
日本小児肝臓研究会運営委員長の虫明(むしあけ)聡太郎医師(近畿大学奈良病院小児科教授)によると、
・小児の急性肝炎はまれな病気であることを踏まえると、(169人という数字は)多いという印象
・国内で先に発見された患者7人に対し、海外と同じ事例か検討していく必要あり
・肝機能を表すASTとALTの数値が標準値より上がっている
・肝炎ウイルスA型~E型の関与は否定されている
今まで発生した子どもの急性肝炎との比較
・小児の急性肝炎はまれだが国内で年間20例ほどある
・子どもにみられる急性肝炎が原因不明であることは珍しくはない(今までも約5割は原因不明)
・小児の急性肝炎の場合、今回に限らず急に重症化して肝移植が行われることもある
・小児の急性肝炎の場合、今回に限らず腹痛や下痢、嘔吐、黄疸、肝機能の上昇などの症状がある
子どもの急性肝炎として、発生数は多いと言えるが、症状などについては特に異常な点はない模様。
やはり今までとの違いとして注目されるのは「アデノウイルス」だが、分かっている限りで肝臓に特異的に感染するアデノウイルスはないとのこと。
アデノウイルスが肝炎を起こすしくみ
虫明医師は「小児の急性肝炎とアデノウイルスにそれほど強いむすびつきはない」と考えた上で、アデノウイルスが肝炎を起こすしくみで2パターン推測。
1.アデノウイルス自体が肝臓に何らかのダメージを加えて、肝炎が発症した
2.感染によって生じた免疫的な反応で、免疫細胞が肝臓にダメージを与えてしまう
「新型コロナウイルス対策」との関連
虫明医師の私見ではあるが、
・コロナ禍で子どもたちは以前なら当たり前のように感染していた風邪のウイルスにあまり晒されずに生育したため、通常なら自然に身に付くはずの免疫(獲得免疫)があまりついていない
獲得免疫の減少については多くの保健機関が懸念事項としてあげているようです。
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