<2017年2月17日の記事をリメイクしました>
節分の翌日『立春』が過ぎると暦の上では春になり、暖かくなってきたかと感じる頃に天気予報で「春一番」と言う言葉をよく聞きます。でも「春一番が吹く可能性がある」とか「この雲で発生する強い風が春一番になるかどうか」という表現されます。
そう、「春一番」には満たすべき条件が4つあります。
強い風が「春一番」になるかどうかは4つの条件で決まる
- 立春から春分までの間に吹く風
- 日本海を進む低気圧に向かって南側の高気圧から吹く風
- 10分間の平均で風速8m/s以上
- 前日に比べて気温が高い
これは関東の春一番の条件です。春一番の条件は地域や気象台で多少異なります。
埼玉県で春一番が吹くのは大体2月から3月半ばです。条件があるので春一番が吹かない年もあれば、「春二番」や「春三番」のように同じく条件を満たした風が何度も吹く年があったりします。
ちなみに。春一番が吹いた日は春のように気温が上昇しますが、翌日は冬型の気圧配置になり冬の寒さが戻る傾向があります。
「春一番」という言葉は江戸時代から存在している
「春一番」という言葉の語源は諸説ありますが、「春一番」という言葉が登場した最も古い記録(文献)は天保2年1月11日に書かれたある日記の中と言われています。この日記には「晴天午ノ刻より雨、春一番東風」と書かれていました。
「1月11日」とあるのになのに春一番なのは、この時代は陰暦を使用していたからです。陰暦1月11日とは現在の2月23日頃を指します。
新聞で初めて「春一番」と言う言葉が登場したのはこれから約130年後、1963年2月15日の朝日新聞朝刊に登場しました。このことから「2月15日」は「春一番名付けの日」とされています。
春一番の記録が古くから残っている理由は気象災害
「春一番」の記録が残るのは、春一番は気象災害(雪崩・融雪洪水など)や海難事故をもたらすことが多いからです。1978年には、東京地方で春一番による竜巻が発生しています。
気象情報で春一番の情報を伝えるのには、春が来る喜びによるものだけでなく、強い突風に注意して欲しいと伝える役割もあります。特に、積雪の多い地域では雪崩や融雪洪水など、とても注意が必要な時期であることを伝える役割があります。
春一番の強い風は転倒など事故を誘発します。さらに、春一番が吹く日は春のように気温が高いのに、翌日は一気に冬に戻る傾向があります。このように気温の上下が激しい季節ともなるので、体調管理にも気をつける必要があります。
日本では分野によって春の期間が多少異なる
桜の開花目当てなど春に日本に来る(来た)外国人の人が戸惑うのは「暦の上では春」という表現だとか。日本では分野によって「春はいつからいつまでなのか」が次のように異なります。
- 学校や役場など『年度』で考える場合の春は4月から6月まで
- 天気予報など『気象学』の春は3月から5月まで
- 『天文学』の春は太陽黄経0°の日(立春)から90°の日(夏至)まで
- 二十四節気の節切りでは立春から立夏の前日まで
- 旧暦の月切りでは1月から3月まで
春は何かの始まりをイメージした言葉が語源になっている
「春」の語源には諸説ありますが、「草木の芽が張る(はる)」「田畑を墾る(はる)」「気象の晴る(はる)」といった様々な”はる”が転じたという説があります。
どの説が正しいとしても、春には『始まり』を連想させて、「さあ」とか「やるぞ」とやる気を起こさせるイメージがあります。
春の季語に『猫の恋』と『亀鳴く』があります。動物にとって春は発情期なので『猫の恋』は想像もつきます。
猫の恋 やむとき閨の 朧月
「をのが光」芭蕉
おそろしや 石垣崩す 猫の恋
「子規句集」正岡子規
しかし、亀が鳴くことのイメージはわきません。亀には人間でいう声帯といった発声器がないので実際に鳴くことはないです。この『亀鳴く』は春になり池から出てきた亀をみてできた季語です。なんとなくのんびりとした、ほのぼのした雰囲気を思い浮かべます。
川越の をちの田中の 夕闇に 何ぞと聞けば 亀のなくなる
藤原為家(広辞苑 第五版)
同じように”実際はないのに雰囲気で作られた”季語として『蚯蚓鳴く』があります。蚯蚓とは「みみず」のことで、これは秋の季語です。
また、”はる”と同じ音ということで「春に財布を新調すると良い」と言われています。お金が入ってきて、財布がパンパンに張る(はる)ことをイメージさせるようです。逆に、「秋は”空き”に通じる」ということで財布の新調はおすすめできない季節と言われています。
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