#34 彼のニオイ、彼女のニオイ|名探偵コナン

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名探偵コナンの二次小説(ふるあず)です。組織壊滅後、梓は安室透が降谷零であることを知っていて、2人は隠れ両想いという設定です。

本作は原作者様ならびに出版社様とは一切関係ありません。著作権は管理人にあり、同等の権利を原作者様のみ有しております。無断での転載・改修はご遠慮ください。

最後に、個人の責任に於いて閲覧して下さい。

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スリスリ スリスリ

「いってきます。今日は遅くなるからいい子にしててね」

梓はゴロゴロと喉を鳴らす大尉の頭を撫でると、玄関で靴を履く。それを邪魔するように大尉は体をスリスリと梓にすりつける。いつもより執拗に。

「…なんか浮気をとがめられている気になるなぁ」

めちゃくちゃマーキングされた自分の足を見下ろして、梓は笑うとバイバイと愛猫に手を振って玄関の扉を閉めた。

「いらっしゃい、工藤くん」

蘭と出かける時は約束の1時間ほど前にポアロに来る新一。コナンだったときに蘭をずっと待たせていたので決して約束の時間に遅れないため、ここで珈琲を飲みながら大好きな推理小説を読んで過ごすことにしていた。

入口が見える席に座り、ブレンドコーヒーを注文する。コナンのときは一応オレンジジュースとかクリームソーダとかにしていたから、堂々と珈琲が飲めることが新一には嬉しかった。

「はい、どうぞ。これはオマケね」

梓の声に新一が本の世界から現実の世界に戻ると同時に、珈琲とレモンケーキの切れ端が置かれる。「切る位置を間違えちゃって」と眉尻を下げる梓に新一は礼を言ったとき違和感に気づいた。

「私の顔に何かついてる?」
「いえ…何か、いつもと香り?が違う感じがして」

「あら、さすが名探偵。コロンを少し、いつもは何もつけないんだけどね」

「気になる?」という梓に新一は首を横に振る。飲食店勤務の彼女は普段なら人工的な香りを身にまとうことはないが、嫌味のないすっきりした、それでもどこか甘さのある香りは梓にとても合っていた。

「よかった」と梓がいつものようにほっこり笑ったとき、バックヤードからマスターが出てきた。

「あ、梓ちゃん。あっちのテーブル片付けたらもう上がっていいからね」「はーい。すみません、今日は無理言って早上がりにしてしまって」

「いいの、いいの。僕今日は特に予定ないから。久しぶりなんでしょ?楽しんでおいでよ」

「ありがとうございます~」と嬉しそうな梓を見て、新一はからかいたい気分になって「もしかして、デート?」なんて言ってみたら

「合コン。まずはデートの相手を見つけなくちゃね」

普段のように「まっさか~」と笑い飛ばされる予定で言ったことに新一は深く後悔をした。

「(爆弾投下しちまった~)あ、ボク、忘れ物~」

警視庁の方角をチラッと見やったあと新一は残りのケーキを口に放り込み、勢いよく流し込んだ珈琲で食堂に押し込み、コナンのときのクセそのままに「えへへ~」と聞こえるような笑顔で会計するとポアロを出ていった。

「(あの人に捕まったら約束どころじゃなくなっちまうからな)あ、もしもし、蘭?かなり早いけど準備できてるなら今すぐ出かけねえか?」

数分後

「お待たせ~」と蘭が登場したのと、視界の端にいつも通り淡い色のスーツを着こなした降谷がうつるのが同時で。「今日は気分を変えてあっちから行こうぜ」と新一は蘭の手をつかみ逃げるように進行方向を変えた。

カラン

「おや、降谷くん。いらっしゃい。アイスコーヒーで良いかい?」
「こんにちは。ちょっと冷えたのでホットでお願いします」

「さっきまで天気が良くて暑いくらいだったのにね」
「雨も降り始めましたからね。傘立て、出していいですか?」

むかし取った杵柄。マスターの了承を得た降谷は入口の脇に隠すようにおいてある傘立てを目立つところに移動して自分のシルバーグレーの傘をたてる。

「結構降ってきてるんだね…梓ちゃん、大丈夫かな」「梓さんがどうかしたんですか?」

新一がこの場にいたら余りの白々しさに呆れたかもしれないが、降谷は何食わぬ顔で尋ねる。そんな降谷にマスターは梓がこれから約束があると言っていたこと、昨日傘が壊れて新しいのを買わないといけないとぼやいていたこと。

「あ、梓ちゃん」

マスターが降谷の肩越しに声をかけ、それにつられるように降谷も振り返り、「あ、降谷さん。いらっしゃい」とほほ笑む梓にトクッと降谷の心臓が弾む。

ホワイトとオフホワイトを上手に組み合わせた可愛い白コーデ。普段香らない人工的な香り、けれども梓によく似合う甘い香り。

「雨が降り出していてね。梓ちゃんの傘が壊れちゃった話をしていたんだ」
「雨…まあ、駅までなので走れば大丈夫ですよ」

「あ、これを被っていこうかな」と手に持っていた薄いピンク色のショールを頭にかぶる。白コーデのキレイめお姉さんがあっという間に童女のようになり「これから合コンに行くんでしょ?ドン引かれるよ~」とマスターが苦笑いをする。

「それじゃあ、この傘使ってください。俺は職場に置き傘があるし、俺の方が足が速いんで」
「…いいんですか?」

「はい。よく閉店時間を延ばしてもらっているのでお礼をかねて」
「降谷くんの言葉に甘えちゃいなよ。走って転んだりしたら大変だし。梓ちゃん、何もないところで転んだりするでしょ」

「…お借りします」

「はい、どうぞ」とにっこり笑う降谷に、何か勝てない気分になって悔しくて、梓は頭にのせていたストールを外して降谷の首にふわりとかける。

「!?」
「少しでも雨避けになれば。降谷さんに風邪ひかせちゃったら部下の人たちに怒られちゃうので」

「それじゃあ、傘お借りしますね」といって梓は白いスカートのすそを翻し、傘立てから降谷の傘を抜き取ると、カランとカウベルを鳴らして外に出る。ドアの向こうで傘が開き、雨の中を歩く梓を守る様にその羽を広げた。

「合コンに紳士物の傘、ねえ」

「上手にマーキングしたねぇ」と笑うマスター。雨の中の合コンが徒労で終わるであろうことを予測して、マスターはちょっと梓が気の毒になったけれど。

「ごちそう様でした」
「うん、仕事頑張ってね」

「お釣りはいりません」といって1,000円札を置いて席を立った降谷の首には淡いピンク色のストール。イケメンは何をしても様になるなと感心したマスターの鼻を擽ったのは梓のつけていた甘いコロンの香り。

(…これはこれは)

昏くなり始めている外でもひときわ目立つ金色の髪の主を見送りながら、ポアロのマスターは誰もいない店内で煙草に火をつけた。

― END ―

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